B級科学者もどきの憂鬱

とある理系になりきれない奴のつれづれなる活動記

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原始惑星系円盤の初等的解析

太陽などの恒星は、宇宙に浮かぶ細かな塵が、
自身の重力で集まって出来たものだということは、
宇宙に興味のある人なら知っているかもしれません。

収縮した塵は、大部分は中心の原始星となりますが、
一部は周囲に残り、土星の輪のように円盤状に集まって、
原始星を中心とする回転を始めます。
これを原始惑星系円盤と呼びます。

今回は、大学初等年度程度の力学の知識を用いて、
原始惑星系円盤の解析を試みます。
これが、前に言っていた力学の問題です。

この解析を詳細に行うとなると、
分量が本一冊どころじゃなくなりますので、
大まかな所を適当に分析します。
それでもこの記事、今までで一番長いですが。

まず簡略化するための前提をいくつか。
原始惑星系円盤の内部にある塵の公転軌道は、
全て原始星を中心とする完全な円軌道であるとします。
また、軌道は全て一平面(赤道面)上にあるとします。

また、原始星と塵の間の相互作用は重力だけであるとします。
例えば、塵同士の衝突・摩擦によって出来る静電気、
原始星の発する光の圧力などは全て無視して、
純粋な力学的要素のみを扱います。

ところで、角運動量という言葉はご存知でしょうか。
角運動量は、回転の中心からの距離と、
物体の運動量との積で定義されます。
例えば、半径3mの円軌道を2m/sで運動する1kgの質点の角運動量は、
距離×運動量=3[m]×(1[kg]×2[m/s])=6となります。

角運動量には、運動量と同じような保存則があります。
多数の物体の角運動量の和は、外力が無い場合は
常に保存するというもので、これを角運動量保存則と呼びます。

外力というのは、解析の対象としている物体の外部から働く力です。
原始惑星系円盤の場合、原始星以外の恒星からの引力などが相当します。
今回はそれも無視できるレベルであったとします。

しかし内力はあってもかまいません。
内力というのはつまり、解析対象の内部で働く力です。
例えば、原始惑星系円盤の内部で塵が衝突したときに働く力などです。
この場合でも、衝突した欠片の角運動量の和を計算すると、
衝突前の欠片の角運動量の和と一致するはずです。

原始惑星系円盤内部の塵は、回転するうちに衝突・合体を繰り返し、
最終的に惑星の大きさにまで成長します。
これが現在の太陽系です。

回転する物体同士が衝突しても角運動量の総和が不変なら、
原始惑星系円盤だった頃の太陽系の角運動量の和と、
現在の太陽系の角運動量の和は、一致するはずです。

ということは、現在の太陽系の角運動量を計算すると、
原始惑星系円盤の角運動量がわかるということです。

というわけで計算してみました。
簡単のために、小惑星や準惑星は除外しています。
必要な数値は全部Wikipediaから取ってきました。
で、結果はこんな感じ。%は全角運動量に対する比率です。

角運動量の計算結果(単位:kg・AU/y)
水星:1.290×1024(0.003%)
金星:2.603×1025(0.059%)
地球:3.754×1025(0.085%)
火星:4.978×1024(0.011%)
木星:2.724×1028(61.536%)
土星:1.103×1028(24.928%)
天王星:2.392×1027(5.403%)
海王星:3.530×1027(7.975%)
合計:4.426×1028

木星と土星が圧倒的に大きいようです。
逆に火星以内の惑星は、全部合計しても1%もありません。
天王星と海王星も、木星などに比べると小さいですね。

この理由は、以下のように考えられています。
原始惑星系円盤の回転速度は、中心からの距離によって違いますよね。
ということは、ある半径で回転しているガスと、
それより少し大きい半径で回転しているガスとの間に、
いくらか摩擦が働くはずです。

摩擦によって、内側にあったガスは
回転速度が弱まり、より内側の軌道に移ります。
逆に、外側のガスはより外側の軌道に移ります。
つまり、ガスの角運動量は、摩擦によって、
どんどん外側に移動していくことになるのです。

一方、内側のガスは、摩擦によって逆に角運動量を奪われ、
どんどん中心の星に向かって落ち込んでいきます。
内側は原始星に近いので、蒸発してガスになっていた成分(氷など)も多く、
結局残るのは、揮発しにくい岩石などのみになります。

そして外側の領域(木星より外側ぐらい)では、
内側から角運動量を得て移ってきたガスが、
蒸発を免れた塵成分(氷など)を核にして集まり、
巨大なガス惑星が誕生します。

では、天王星と海王星の角運動量が低いのは何故でしょうか。
この原因は、原始星から遠すぎることにあります。

実は、惑星形成のスピードは、原始星から近いほど速いのです。
天王星や海王星は、太陽から遠いために形成が遅れ、
その間にガスがさらに外側に拡散してしまったため、
あまりガスを取り込めず、大きくなれなかったと言われています。

さてここで、目ざとい方は気付いたかもしれません。
天王星などが取り込む予定だったガスが拡散してしまったのなら、
角運動量も一緒に拡散してるはずだから、
原始惑星系円盤と今の太陽系で、角運動量は保存してないじゃん! と。

確かにその通りです。
でも多分その程度は、惑星だけを計算対象とした時点で、
小惑星とか準惑星とかカイパーベルトとか無視しているので、
その分の誤差の範囲に含まれているかなぁと思います。
違っても多分一桁ぐらいでしょう。

それに拡散量の計算を行うのは、
ちょっとこのブログじゃ手に余るので、
誤差ってことで勘弁してください。


最後に、補足と注意、問題の経緯について。

話を色々と簡単にするために、
厳密性は相当犠牲にしました。
上に書いたことで厳密でない部分は、次の通り。
・太陽系形成の歴史
・角運動量
・角運動量保存の法則

……ほとんど全部ですね。
まぁつまりこの記事で言いたかったのは、
角運動量保存則という簡単な法則から、
原始惑星系円盤という壮大な対象も
大まかに解析出来ちゃうんですよってことです。

そのために必要最低限な内容だけを紹介しました。
一応、物理の得意な高校生なら分かるように、
つまり大学新入生に最初に話す内容くらいを
想定して書いたつもりです。

流し読みくらいでは全部は分からなくとも、
概略ぐらいはある程度わかるかな、と思います。
逆に言うとそのレベルの話しかしていないので、
厳密に言うのはほぼ不可能であることもお分かり下さい。

大学で角運動量というものを習っても、
普通、演習問題として与えられるものは、滑車などが多いです。
あまり物理学のホットな話題を直接扱うことは無いようなので、
夢を持って入ってきた学生にはあまり面白くないのではないかと思います。

でも多分、学生が本当にやりたいのは、
こういう夢のあるテーマじゃないでしょうか。
少なくとも私が問題を出される側なら、そう思います。
勉強って、興味を持てないとあまり身が入りませんよね。
そういう意図で、こんな問題を作りました。

他にも色々考えました。題材としては、
・探査機のスイングバイの軌道計算
・簡単なカオス現象の解析
・原子の原子番号の最大値の計算
などです。その中でも一番壮大だったのがこれでした。

記事では結局角運動量についてしか考察しませんでしたが、
実際に話す際には、原始惑星系円盤の密度分布なども
含めたりしてもいいと思います(各惑星の質量から概算できる)。
それから、これは天体物理学の活発な研究テーマの
一つであるということも、最初に言っておくべきでしょうか。

ちなみに、この問題を友人に話してみたら、
「話題が身近じゃないのでイメージしにくい」
「理解に必要な知識が多すぎる」
と言われてしまいました。残念。

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